同人ブログ。 原稿の進行状況やその日あった雑記などを気ままに書き散らしております。 メインの小説はカテゴリ欄にてジャンル別でおいておりますので、そちらをご覧くださいますよう御願い致します。
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◆ ◆ ◆ ◆ ◆
花瓶に収められた花を眺め、少年はただしとしとと降り落ちる水滴の音を聞いている。何もすることが無いわけではないが、かといってしなくてはいけないことはない。ただ流れる時間に任せ、彼は止まない雨音を耳にしては飾られている花に手を伸ばしては引っ込め、何をしたいのか分からない自身の動きにただ苦笑をするだけだった。
主が、姿を見せない。
理由は分かっているのだ。単に仕事が忙しくなっただけ。予め来れなくなったのならそれは用事が重なっているからであって、来たく無いから来ないのではないと告げられている。ヒトのココロを抉る言葉をよく用いる青年であるが、嘘だけは吐かないことを知っているから、その通りなのだろう。
別に、不満があるとは言わない。
頬杖をついて窓ガラスに映る不細工な自分の顔を見つめ、少年は翡翠の瞳を閉じて大きく息を吐いた。
「アジサイだけ置いていくのはどんな意味があるんだか……」
窓の外で雨水に濡れて水滴を零し続ける花を眺め、首は動かさず視線だけ花瓶に収められている花へ移す。少し前まで外に出していたので雨水を含んだ土はしっとりと濡れ、茎や葉には未だ雫が残っていて生命力をそのまま現しているようだ。
「これも、データに過ぎないはずなんだけどね」
青年が住まう世界とは異なるセカイ。太陽が東から昇っては西に沈み、時には積乱雲とともに豪雨が襲い、花が咲き、木々が風に揺れ、ヒトが生活を営むセカイ。
それでも、それは全て0と1の数字が変換されて構成された、デジタル仕様のセカイ。
世界とセカイを行き来する主である青年は何ら変わらないと以前話していたが、それでも自身が世界へ行けず、セカイに捕らわれていることには変わらない。
少年は――金色の髪と翡翠の瞳を持った歌い手たる少年は、考えるのをやめて頬杖を崩して窓枠に寄りかかった。
鮮やかな紫色を保った花がその拍子に微かに揺れ動き、視線を再びそちらに持っていく。脳内で簡単に覚えているその花のことを思い出して、少年は意味もなく軽く口を開いた。
「アジサイ、別名ハイドレンジア。梅雨時に咲き、色を変えていく花。花言葉は」一度口を噤み、記憶にある言葉を口にするのを躊躇うが「『非情』」
ふと、言葉を羅列してから何故その花を青年が摘んできたのか、と考える。単純に庭に咲いているものを摘んできたと話していたが、本当にそれだけなのだろうか。
『非情』の花言葉を持つその花は、雨が多く降り湿気でじめつく季節に咲き始め、夏の到来と共に枯れ散っていく。
そんな、期間の短い花だ。
花弁に手を伸ばし、少年はその花をじっくりと観察し始める。一息に紫と言ってもその色合いは花びらによって微細に異なり、少し薄みがかっていたり、赤みがかっていたり、青みがかっていたり。そして、枯れ落ちようとするかの如く、茶を含み始めていたり。
同じ花、同じ根から現れているはずなのに、全て同じ色と言うものは存在していない。瞳に映るその花を眺めていれば、部屋と廊下を隔てるドアをノックする音が鼓膜を打ち、少年は我に返ったように花から視線を外して来訪者を中へ誘った。
「発声練習くらいはしてたんだろうな?」
傲慢な口調と口元だけを吊り上げる笑み。数日音信不通になっていた主の姿がそこにあった。
「マスター……」
窓枠から身体を離して身を起こそうとすれば青年が手を前に出してその動きを押し留め、彼の方から少年に近づいていく。
「淋しくて泣いているんじゃないかと思ったが、そうでもないか?」
「誰が泣くって言うんだよ、たかだか一週間かそこら来なかっただけで」
喉を鳴らして笑う青年に言い返して肩を大きく竦めて見せれば、その仕草にも笑みを零し、青年は少年の傍に設置されている寝台に腰を下ろした。
「それだけ言い返せれば問題無さそうだな。とりあえず今日は時間を取れたが、また明日からそうも行かなくなるんでな」
疲れきった面持ちでそう呟いた青年の顔をうかがう。少し目の下にクマが出来、普段は小ざっぱりしている服装も今日はTシャツにジーンズと言った限りなくラフな格好だ。
「そんなに忙しいなら無理してこなきゃいいのに」
言外に休め、と意味を込めて言えば伝わったのか苦笑を漏らし、青年は表情を和らげて彼に視線を向けた。
「お前らと話すだけでも気分転換にはなる。ぐだぐだたらたら仕事されるよりはよっぽど気が休まるもんだ」
「……ならいいけど」
突然柔らかな眼差しを向けられて思わず視線を逸らしながら返せば、青年の手が少年の腕を取り、そのまま引き寄せる。抵抗せずにそのまま引き寄せられればぬいぐるみのように背中から腕を回され、互いの体温が布越しに感じられるようになった。
「暑いんだけど」
「そう刺々しくなるな」
本心から口に出したものの強がりだと取られたのか頭を撫でられ、子ども扱いされていることに頬を膨らまるが青年は気にする様子もなく飾られているアジサイに気を向ける。
「綺麗に咲いているな。世話してるようで何よりだ」
「リンじゃないんだから簡単に枯らしたりなんてしねぇし」
双子の姉を例えに上げれば再び喉を鳴らして笑い、青年はふと問いを投げ掛けた。
「レンはアジサイを見てどう思った」
唐突な問いかけはこの主にはいつものこと。始めは応えに窮する事も多かったが、既にそんな青年に慣れた少年は臆することなく口を開く。
「綺麗だけど哀しい」端的な答えをひとまず返し「こんだけ世話しても梅雨が明けたら枯れるって聞いたから。あんまり好きにはなれない」
ぶっきらぼうに答えた少年の髪を梳いていた青年の指が彼の答えを聞いて止まり、溜息とは異なる小さな息と共になるほど、と吐き出した。
「レンの言うことも一理ある。それもアジサイの一面だからな」少年の言葉を肯定し、青年は続ける。「だが、まだ浅い」
口元を歪め、何処か楽しげに笑う青年は少年の髪に寄せていた指で紫陽花の花を指し示す。
「アジサイはその花の名に花の色を含める紫を入れているが、それだけではなにのは見て分かることだ。昔のヒトはそこに着目してアジサイを“七色に変わる花”と考えていたと言われている」
「七色? 確かに色はちょっとずつ違うかもしれないけど、そこまで大袈裟に言うほどじゃないと思うんだけど」
「しかし、変わっていることに変わりは無い。それこそ受け取り方の違いだからな。……同じ根からでも変わることが出来るというのは、花自体にその意思はなくとも受け取り手からすればまた可憐であり儚くも感じ取ることが出来る。特にレンがさっき言った通り、アジサイはすぐに枯れてしまうからな。しかし、そこにこそ儚さと美しさが同居しているとも言える」
指を下ろした青年は彼に導かれるまま視線を花に向けていた少年の頭に手を再び置き、意識を花から逸らさせて真っ向から少年の翡翠の瞳を覗き込む。
「七色と言って、レンはまず何を思い浮かべる?」
再び質問を繰り出され、青年の言葉を何とか飲み込んでいた少年はパンクしそうなほどの情報に頭を抱えながらも思い浮かんだものを口にする。
「……虹?」「大多数はそうだ」
逡巡してから応えた少年の頭を乱暴に撫で、青年は窓の外を伺う。全く晴れる気配のない曇天は限りなく続き、視界に雲の切れ目がない。虹が出そうな気配がないかと考えを巡らせたのか少し残念そうに眉尻を下げた青年の顔を眺めながら少年は彼の口が開かれるのを待つ。
「……虹も確かに七色で現れる。それもアジサイと同じ様にすぐに消えていくだろう? 七色というのは“儚くも美しいもの”に付けられるものだと、結論付けることが出来る」
いつの間にか自論の展開になっていることに少年は気付いたが、特に反論もないのでそのまま青年の言葉を待つことにすれば、窓外に向けられていた青年の視線が降りて少年を真顔で見つめる形になった。
「な、なんだよ」
「いや、ここまで理解できてるかどうかの確認だ。わかったか?」
「んなッ! 何処まで子ども扱いするつもりだよっ!」
真顔で問いかける青年に腹を立てて視線を外すように首を背ければ、苦笑が耳に入る。
「そういうところがまだまだガキ扱いしたくなる素振りだというのが何故わからない」
クスクスと笑う青年に反論しようと再び顔を戻すが、不意に青年が少年を抱きかかえたまま寝台へ倒れこみ、危うく舌を噛み掛けて反論するタイミングを逃せば、ちょうど少年の耳元に近づいた青年の口から囁きが漏れ出た。
「まぁ、さほどアジサイを嫌いになっていないようで安心した、のだが安心ついでに眠くなったのでこのまま寝るぞ」
「ちょっとっ! ヒトの布団で寝ないでよ!自分の部屋に帰って寝ればいいじゃんか!」「レンは俺と寝たくはないか?」
顔を青年に向けて反論していればその言葉を遮って青年が呟き、その言葉に彼は何も返せなくなる。
「……そういうの、ズルイ」
「ズルくて結構。ほら、寝るぞ。俺は疲れてるんだ」
ぽそりと呟いた言葉に対して引き寄せている腕に力を込めて距離を近づけながら返した青年はそれきり何も言わず寝息を立て始めてしまう。眠ってしまったはずなのに少年の身体を離さない腕を抓ってみたりするが、逆に強く引き寄せられてしまい、寝返りすら打てなくなったのを最後の抵抗に、少年は一際大きく溜息を吐いて瞼を閉じる。
その口元が柔らかく緩んでいたのは、彼も、その彼を捕まえている青年も知らないことだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
――色彩に踊り
――四季祭に揺れる。
――咲き枯れ
――移り廻る。
――廻るは四季。
――移るは時。
――廻り廻る時の流れ。
――流れる時はヒトも巡らせ。
――移り変わるもまた運命(さだめ)。
――変わる変わる。
――四季の廻りと共に。
――ヒトは変わる。
――溢れる色彩の如く。
――廻る四季の如く。
――示される道に限りは無く。
――ナナイロよりも、道は広がっている。
――了――
アトガキ
な、何ヶ月ぶりの更新でしょうか、久々に一日仕上げで更新が出来ました。待ってくださっていた方がいたならありがとうございます。お久しぶりです、駄文書きのカズサです(平伏)
日記すらまともに書いてない昨今なのですが、徐々に生活リズムを掴……めねぇよwwwww
いやもう真面目に休みだと思ってたら急遽予定入るわ、逆もまたあるわ。はたまた家に帰れば翌朝早いからPC開く気力すら生まれないときたもんだ。
そういうわけで最近原稿やるのは休みの日、それも予定の無い休みの日だけという惨状にありますι
あ゛ーもうね、正直きっついっす。いや、なにがって駄文を書く暇が無いことが。色々妄想は貯まってるんですよ。正に貯蓄していくしかないんです。吐き出す暇が無い。
まぁ、とりあえずそろそろコッチにも復帰していきたい次第。オンラインも更新できればいいけど、オフラインも活動再開していこうと思います。
その復帰第一弾として、今回の作品。お、ようやくちゃんとアトガキっぽいこと言えたww
今期から新社会人として新たな道に踏み出した筆者な訳ですが。
今回の作品は、ボクより年齢が下の方々は勿論、上の方にも言いたいこと。
四季は巡り、巡る時に合わせてまた花が咲いて。
そうした時間の流れの中で、ボク達は生きていて。
そうやって生きている間、困難は訪れるけど、それでも道は一つじゃない。
辛いことはたくさんあるけど、そんなときはふと周りを見渡すのも、大切。
悩みが無い人はいないと思う。満足している人もいれば、現状に不満を抱いてる人もいると思う。
だけど、ふと周りを見れば何処かしらに緑を見ることが出来ると思う。そこでまた、移り変わりを感じれば、以前に見たときよりも時が過ぎ、何かしら自分に変化があったことを自覚できると思う。
たった一度の人生、愉しんで生きなきゃ損じゃない?(笑)
2009/07/13 伴和紗 拝
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絶賛原稿中です、お久しぶりです和紗です。
突然ですがイベント告知です、サマーウォーズです。
1/24 「よろしくお願いします1」にてスペース取れましたー。
4階 エ05
こないだ(10/31)完売した本とコピー誌で出したものを再版致しますー。一応新刊も(目標)2冊オンデマンドで。気力が足りればコピー本も刊行するつもりです、仕事しろって言うなww
現在ですが、ホントにキングラブです、うん、ボカロの方にはホント申し訳ない、いまや私、レンよりケモノです。
「キング孕ませたい」が口癖になってるなんて、そんなw
しかし新刊・既刊共にケンカズばかりですがw
一応今度のイベントにはキング受も出せたら、いいなぁ……(遠い目)
1/2も出勤なんだぜww
マジで休みよこせっていうか仕事しすぎだ日本人orz
脈絡ないけどとりあえずまだ生きてますよーっていうことと、まだまだもぐりますよーということで(苦笑)
突然ですがイベント告知です、サマーウォーズです。
1/24 「よろしくお願いします1」にてスペース取れましたー。
4階 エ05
こないだ(10/31)完売した本とコピー誌で出したものを再版致しますー。一応新刊も(目標)2冊オンデマンドで。気力が足りればコピー本も刊行するつもりです、仕事しろって言うなww
現在ですが、ホントにキングラブです、うん、ボカロの方にはホント申し訳ない、いまや私、レンよりケモノです。
「キング孕ませたい」が口癖になってるなんて、そんなw
しかし新刊・既刊共にケンカズばかりですがw
一応今度のイベントにはキング受も出せたら、いいなぁ……(遠い目)
1/2も出勤なんだぜww
マジで休みよこせっていうか仕事しすぎだ日本人orz
脈絡ないけどとりあえずまだ生きてますよーっていうことと、まだまだもぐりますよーということで(苦笑)
サマーウォーズ、イベント1月か2月どっちになるかは未だわかりませんがとりあえず出ます。毎イベントコピー本とオンデマンド一冊ずつを目標に日々仕事に追われながらやってます、和紗です。
最近色々仕事任され始めました。おかげさまで帰宅時間も遅くなる一方ですよこの野郎><
無性にケモノに抱きつきたい衝動に駆られてます。空から獣人降ってこないかなぁ……←末期
はてさて。
この状況ですが、サイト改変致します。や、前の日記でも描いた記憶が無いわけじゃないんだけど、とりあえずサイトは運営仕切れないのでブログに縮小しようと思いまして(^o^;
や、正直ここまでしんどくなるとはおもわなんだ。もう少し余裕あるかとは思ったんだけど……(ノд<。)゜。
今月中には色々しようと思いますー。
最近色々仕事任され始めました。おかげさまで帰宅時間も遅くなる一方ですよこの野郎><
無性にケモノに抱きつきたい衝動に駆られてます。空から獣人降ってこないかなぁ……←末期
はてさて。
この状況ですが、サイト改変致します。や、前の日記でも描いた記憶が無いわけじゃないんだけど、とりあえずサイトは運営仕切れないのでブログに縮小しようと思いまして(^o^;
や、正直ここまでしんどくなるとはおもわなんだ。もう少し余裕あるかとは思ったんだけど……(ノд<。)゜。
今月中には色々しようと思いますー。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
蝉の鳴き声が遠い。
それも当然だろう。傍には電柱もなく、木々も無い。蝉が止まる場所が無いのだから。
「ねぇ」
買い物袋を提げた少年が、隣を歩く青年に声をかける。少年以上に荷物を抱え、彼らよりも先を歩く女性を追っていた青年だが、彼の声掛けで歩む速度を緩めた。
「どうしたの、佳主馬くん?」
柔和と言うよりも、臆病さを滲ませた瞳が少年へと向けられる。ビニール袋が歩くたびにカサカサと音を立て、それが夏の暑さに苛立つ心を更にざわめかせるが気づかない振りをしてやり過ごす。
「雷、聞こえなかった?」
微かに聞こえた、雷の音。気のせいかと思ったが、ただ歩くよりは話を振って気を紛らしたほうが熱さも少しは和らぐかと思った。
夕暮れにはまだ時間の余る昼下がり。明日帰る予定の青年の為に、ぼろぼろになった家屋の中でまた宴会を開くといった大人たちの都合で買い物に出され、彼らはその帰り道だった。
「雷? どうかな……ちょっとぼーっとしながら歩いてたから」
「気のせいかもしれないけど」
気の抜けた表情をしているのはいつものことではないのか、という言葉を飲み込んでそれだけ答えると、佳主馬は青年へ目を向けながらもその先へ視線を走らせる。
遠かったはずの入道雲が、先ほどよりも近づいたように見えた。
「あの雲」
指で指し示せば、青年も振り返って雲を視界に収める。少し目を細め、雲の細部まで見ようとするその姿を見つめつつ、少年もまた内心で溜息を吐き出す。
何に対しての溜息なのか、彼自身わかっていないが。
「確かにおっきな入道雲だけど、あれが雷鳴らしてたとしても聞こえるものかな?」
「知らない」
青年の言葉通り、距離は相当離れている。それでも、辺りには他に雲もなく、憎たらしいほどに眩しい太陽が日差しを降らしている中、雷を鳴らすとしたら話題の雲以外にないのだ。
「いいよ、気のせいだったのかもしれないし」
話題を終わらせて別の話を振ろうとするが、青年は先ほどよりも歩む速度を落としながら袋を持った手を自身の顎に運んでぶつぶつと何か考え始めてい る。耳を立てれば音の速度やら何やら、と呟いているので少年の言葉を鵜呑みにして距離がどのくらい離れているのかを考えているらしい。
「健二さん」
思考を切り離させる、少年の声。向けられる瞳には先ほどよりも強い何かがこめられているように見えて一瞬押し黙った佳主馬だが、臆面には出さずにただ前方を歩く女性達を指差した。
「夏希姉ちゃんたち、先行っちゃってるよ」
「え? うわ、結構離れちゃってる! 急ごう、佳主馬君!」
何故そんなに慌てる必要があるのか。
ふとそう思ったが、そのすぐ後に彼が誰に対して想いを馳せているのかにはたと気づき、今度は溜息を表に出す。
「そんな焦んなくたって、別に夏希姉ちゃん逃げたりしないよ」
行きに通ってきた朝顔畑が近づいてきた。大半が既に花弁を俯かせ、紫色の蕾状のものがいくつも垂れ下がっている。
祖母が亡くなったのはつい数日前。未だに実感がわかないが、それでもいなくなってしまったことには変わりない。捻くれているつもりはないが、余り大勢で集まりたくない少年の性格をわかってか、祖母は話しかけるときはたいてい二人きりのときに声をかけてきた。
話すことは他愛ないことばかりだった。
だが、その中に大切なことが含まれていたのだと、振り返ってみて思う。
「佳主馬君?」
視線を空から大地に移し、整備されていない道に多数の石ころが転がっているのを見ながら歩いていれば、不意に青年から声をかけられる。
「なに?」
「いや、なんか機嫌悪い?」
「はぁ?」
機嫌を悪くするようなことをされた覚えもないし、悪くした覚えも無い。語尾を上げて、少し眉根を寄せた視線を向ければ、青年がたじろいだ様に距離をとられた。
「気のせいだよ。むしろ、今の健二さんの言葉に気分悪くなった」
「え?! ご、ごめんっ!」
「謝るくらいなら初めから言わないでよ」
追い討ちをかけるように言い放てば、目に見えるほどの落ち込みを見せ、その姿に今一度溜息を吐く。
「健二さんって、ホント変だよね」
先ほどまで雷の件で思考を巡らせていたかと思えば、ちょっとした言葉ですぐにたじろぐ。
周りが見えていないのかと思えば、今のように少年自身気づいていない変化に気づいて声をかける。
「変、かなぁ……」
「変だよ」
きっぱりと言い放って視線を前に戻せば、先ほど確認した以上に距離の離れた夏希達が、ようやく二人と離れているのに気づいたらしく、歩みを止めて待っているのが見えた。
「ほら、行かないと」
声をかけながら自ずと歩む速度を上げた矢先。
「「あ」」
少年と青年の声が交わる。
「聞こえた?」
何が、とは聞かずに踏み出したままの足を止めて青年を見上げれば、彼も何故か微笑みながら頷きを返した。
「うん。雷の音、だったね。夕立、来るんじゃないかな」
同時に聞こえた雷の音。青年が憶測のままに発した言葉で、何処となく湿気が高まったような気もするのだから、不思議だ。
「だったら急いで戻らないといけないんじゃない? 濡れたくないし」
「そうだね」
合わせるつもりは互いにないが、自然と二人は歩を進める。
遠くの空から聞こえた、雷の音。
今は二人が歩む度にたつ、石の転がる音。
朝顔畑の入り口を過ぎたところで、佳主馬はチラと健二の顔を見た。
穏やかな笑みを携えたその眼差しは、又従姉に向けられており。
ちくりと痛んだ胸を、気づかれないようにそっと握り締める。
手に入ることは無いのだろう。
だからこそ、欲は加速度を増して。
ほんの数センチ先にある手を握ることも、無い。
微かに歪んだ表情を見たのは、未だに花弁を開いていた僅かな朝顔。
(雨、降らないかな……)
近づきつつある巨大な入道雲。
盛大に降り出した雨ならば、仮に小声で呟いても掻き消してくれる。
閉じ込めている言葉が、溢れ出てしまっても。
「行こう、佳主馬君」
俯き気味に歩いていた少年の手が、乾いた手に取られる。驚いて顔を上げれば何の気なしに彼の手を取った青年が笑みを湛えたまま小首を傾げてきた。
「元気ないけど、疲れた?」
「……べつに、疲れてない。けど、恥ずかしいから手、離してよ」
小さい子じゃないんだから、と付け加えれば苦笑と共に手が離れる。
「うん、ごめんね。なんか、繋ぎたくなっちゃって」
離した手を自身の頭に持っていって、気恥ずかしげに掻きながら青年が呟いたのを背けた視界の端で捕らえ、佳主馬は前を歩いていた彼よりも先へ身体を進ませた。
「……やっぱり、健二さん変」
抜き去り際にそう発して、そのまま彼を置いて行かんばかりの勢いでさっさと歩けば、無様な足音を立てながら青年が彼に追いつこうと早歩きになる。
「へ、変って言わないでよ」
「変なんだから、仕方ないじゃん」
他愛ない会話を、すました表情のままで。
気づかれてはいけないから。
遠くで鳴る雷のようになっては、いけないから。
「健二さん、置いてくよ」
「も、もう置いていこうとしてるよね?!」
朝顔畑を通り抜けながら、口元が緩むのを抑えきれずにいる少年は、その顔を誰にも見られないよう地面を眺めたまま歩を進めた。
――fin――
アトガキ
久々に更新。とはいえ、実はコレ、既出ものです。
10/31にあったショタスクラッチにてペーパー配布していたのですが、そちらに載せていました。さらに付け加えるなら、10月半ばにはmixiで友人限定で公開もしてました。
まぁ、一時まるまる書けなくなった時期がありまして。そのリハビリがてら紡いだのがコレになります。
今はだいぶサマーウォーズで活動をしているので、一応サイトになにもないのはなーってことで。
うん、ちょっと仕事が忙しくなりまして、ねorz
まぁうだうだ言っても仕方ないからー。頑張りますv
09/11/25 和紗
蝉の鳴き声が遠い。
それも当然だろう。傍には電柱もなく、木々も無い。蝉が止まる場所が無いのだから。
「ねぇ」
買い物袋を提げた少年が、隣を歩く青年に声をかける。少年以上に荷物を抱え、彼らよりも先を歩く女性を追っていた青年だが、彼の声掛けで歩む速度を緩めた。
「どうしたの、佳主馬くん?」
柔和と言うよりも、臆病さを滲ませた瞳が少年へと向けられる。ビニール袋が歩くたびにカサカサと音を立て、それが夏の暑さに苛立つ心を更にざわめかせるが気づかない振りをしてやり過ごす。
「雷、聞こえなかった?」
微かに聞こえた、雷の音。気のせいかと思ったが、ただ歩くよりは話を振って気を紛らしたほうが熱さも少しは和らぐかと思った。
夕暮れにはまだ時間の余る昼下がり。明日帰る予定の青年の為に、ぼろぼろになった家屋の中でまた宴会を開くといった大人たちの都合で買い物に出され、彼らはその帰り道だった。
「雷? どうかな……ちょっとぼーっとしながら歩いてたから」
「気のせいかもしれないけど」
気の抜けた表情をしているのはいつものことではないのか、という言葉を飲み込んでそれだけ答えると、佳主馬は青年へ目を向けながらもその先へ視線を走らせる。
遠かったはずの入道雲が、先ほどよりも近づいたように見えた。
「あの雲」
指で指し示せば、青年も振り返って雲を視界に収める。少し目を細め、雲の細部まで見ようとするその姿を見つめつつ、少年もまた内心で溜息を吐き出す。
何に対しての溜息なのか、彼自身わかっていないが。
「確かにおっきな入道雲だけど、あれが雷鳴らしてたとしても聞こえるものかな?」
「知らない」
青年の言葉通り、距離は相当離れている。それでも、辺りには他に雲もなく、憎たらしいほどに眩しい太陽が日差しを降らしている中、雷を鳴らすとしたら話題の雲以外にないのだ。
「いいよ、気のせいだったのかもしれないし」
話題を終わらせて別の話を振ろうとするが、青年は先ほどよりも歩む速度を落としながら袋を持った手を自身の顎に運んでぶつぶつと何か考え始めてい る。耳を立てれば音の速度やら何やら、と呟いているので少年の言葉を鵜呑みにして距離がどのくらい離れているのかを考えているらしい。
「健二さん」
思考を切り離させる、少年の声。向けられる瞳には先ほどよりも強い何かがこめられているように見えて一瞬押し黙った佳主馬だが、臆面には出さずにただ前方を歩く女性達を指差した。
「夏希姉ちゃんたち、先行っちゃってるよ」
「え? うわ、結構離れちゃってる! 急ごう、佳主馬君!」
何故そんなに慌てる必要があるのか。
ふとそう思ったが、そのすぐ後に彼が誰に対して想いを馳せているのかにはたと気づき、今度は溜息を表に出す。
「そんな焦んなくたって、別に夏希姉ちゃん逃げたりしないよ」
行きに通ってきた朝顔畑が近づいてきた。大半が既に花弁を俯かせ、紫色の蕾状のものがいくつも垂れ下がっている。
祖母が亡くなったのはつい数日前。未だに実感がわかないが、それでもいなくなってしまったことには変わりない。捻くれているつもりはないが、余り大勢で集まりたくない少年の性格をわかってか、祖母は話しかけるときはたいてい二人きりのときに声をかけてきた。
話すことは他愛ないことばかりだった。
だが、その中に大切なことが含まれていたのだと、振り返ってみて思う。
「佳主馬君?」
視線を空から大地に移し、整備されていない道に多数の石ころが転がっているのを見ながら歩いていれば、不意に青年から声をかけられる。
「なに?」
「いや、なんか機嫌悪い?」
「はぁ?」
機嫌を悪くするようなことをされた覚えもないし、悪くした覚えも無い。語尾を上げて、少し眉根を寄せた視線を向ければ、青年がたじろいだ様に距離をとられた。
「気のせいだよ。むしろ、今の健二さんの言葉に気分悪くなった」
「え?! ご、ごめんっ!」
「謝るくらいなら初めから言わないでよ」
追い討ちをかけるように言い放てば、目に見えるほどの落ち込みを見せ、その姿に今一度溜息を吐く。
「健二さんって、ホント変だよね」
先ほどまで雷の件で思考を巡らせていたかと思えば、ちょっとした言葉ですぐにたじろぐ。
周りが見えていないのかと思えば、今のように少年自身気づいていない変化に気づいて声をかける。
「変、かなぁ……」
「変だよ」
きっぱりと言い放って視線を前に戻せば、先ほど確認した以上に距離の離れた夏希達が、ようやく二人と離れているのに気づいたらしく、歩みを止めて待っているのが見えた。
「ほら、行かないと」
声をかけながら自ずと歩む速度を上げた矢先。
「「あ」」
少年と青年の声が交わる。
「聞こえた?」
何が、とは聞かずに踏み出したままの足を止めて青年を見上げれば、彼も何故か微笑みながら頷きを返した。
「うん。雷の音、だったね。夕立、来るんじゃないかな」
同時に聞こえた雷の音。青年が憶測のままに発した言葉で、何処となく湿気が高まったような気もするのだから、不思議だ。
「だったら急いで戻らないといけないんじゃない? 濡れたくないし」
「そうだね」
合わせるつもりは互いにないが、自然と二人は歩を進める。
遠くの空から聞こえた、雷の音。
今は二人が歩む度にたつ、石の転がる音。
朝顔畑の入り口を過ぎたところで、佳主馬はチラと健二の顔を見た。
穏やかな笑みを携えたその眼差しは、又従姉に向けられており。
ちくりと痛んだ胸を、気づかれないようにそっと握り締める。
手に入ることは無いのだろう。
だからこそ、欲は加速度を増して。
ほんの数センチ先にある手を握ることも、無い。
微かに歪んだ表情を見たのは、未だに花弁を開いていた僅かな朝顔。
(雨、降らないかな……)
近づきつつある巨大な入道雲。
盛大に降り出した雨ならば、仮に小声で呟いても掻き消してくれる。
閉じ込めている言葉が、溢れ出てしまっても。
「行こう、佳主馬君」
俯き気味に歩いていた少年の手が、乾いた手に取られる。驚いて顔を上げれば何の気なしに彼の手を取った青年が笑みを湛えたまま小首を傾げてきた。
「元気ないけど、疲れた?」
「……べつに、疲れてない。けど、恥ずかしいから手、離してよ」
小さい子じゃないんだから、と付け加えれば苦笑と共に手が離れる。
「うん、ごめんね。なんか、繋ぎたくなっちゃって」
離した手を自身の頭に持っていって、気恥ずかしげに掻きながら青年が呟いたのを背けた視界の端で捕らえ、佳主馬は前を歩いていた彼よりも先へ身体を進ませた。
「……やっぱり、健二さん変」
抜き去り際にそう発して、そのまま彼を置いて行かんばかりの勢いでさっさと歩けば、無様な足音を立てながら青年が彼に追いつこうと早歩きになる。
「へ、変って言わないでよ」
「変なんだから、仕方ないじゃん」
他愛ない会話を、すました表情のままで。
気づかれてはいけないから。
遠くで鳴る雷のようになっては、いけないから。
「健二さん、置いてくよ」
「も、もう置いていこうとしてるよね?!」
朝顔畑を通り抜けながら、口元が緩むのを抑えきれずにいる少年は、その顔を誰にも見られないよう地面を眺めたまま歩を進めた。
――fin――
アトガキ
久々に更新。とはいえ、実はコレ、既出ものです。
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まぁ、一時まるまる書けなくなった時期がありまして。そのリハビリがてら紡いだのがコレになります。
今はだいぶサマーウォーズで活動をしているので、一応サイトになにもないのはなーってことで。
うん、ちょっと仕事が忙しくなりまして、ねorz
まぁうだうだ言っても仕方ないからー。頑張りますv
09/11/25 和紗
4連休も取れたのでたまりに溜まっていたストレス発散してます、ばんわ、カズサです。
とりあえず昨日一日デート(嘘/相方と遊びに行っただけ)に横○中華街に行き、たらふくご飯食べた後にカラオケ二人で三時間歌い呆けてました(笑)
とりあえずレン曲も歌ったけど、個人的には歌の上手い相方がレンを歌っているのが多いので「○肩の蝶」とかは向こうにレンやってもらって勝手にリンで入ったりとかしてましたww
とりあえず歌ってきたボカロ曲羅列ー
・右/肩/の/蝶
・d/a/n/d/e/l/i/o/n
・I/M/I/T/A/T/I/O/N B/L/A/C/K
・冬/の/虫
・空/飛/ぶ/う/さ/ぎ/の/う/た
・m/a/g/n/e/t(あわせろって言われて無理矢理入ったw)
・F/o/r/t/u/n/e/ d/r/i/v/e/r
くらいだったかなぁ……あとはジャム歌ったり色々阿呆なことばっかり(喉的な意味で)してたからwwww
んー、一月カラオケ行かないとやっぱりダメだねーストレス溜まる!!
とりあえずボカロ楽曲は好きなのも多いし、一人で歌うのもいいけど、やっぱりあわせるのって凄く楽しい(笑)
そんなこんなでカラオケ後は呑みに行って終電まで呑んでw
今日はもう一日爆睡してましたwホントダメ人間生活万歳←おま
うん。おかげでテンションも持ち直しましたっ!頑張って原稿やるって気にはなった。
んー、昨日ちょっと呑みにいったのが相方の知り合いさんとかで、ボクは全然面識ない人ばっかりだったんだよね?
んで、しかも文じゃなくって絵描きさんで、ボクは皆さんのイラストみたことあるくらい凄い人たちで。
そんななかで個人的にわかっていたっていうのもあるけど、相方から僕の文章について、「んー、好きな時もあるけどそっちのが稀」って言われちゃってwwwww
癖があるってことなんだよなーって。
ボクの文章と波長の合う人がいないわけじゃない(って信じたい)から、それでも身近ではそういう見解をもたれるような文章しか書けてないんだなーって思ってねー。
悔しいってのと、じゃあなんでボクの文章は合わなかったのかなぁって思ったり。
ボク個人としては彼が「好き」って言ってくれた奴も今回出した新刊もおんなじイメージ・進行で書いていったつもりだったんです。それでも別れるってことはやっぱり固定化はしていないんだなぁって思って。
難しいよねー。何かを作り出すのって。
だけど、良かったって言ってくれる人がいるからやっぱり頑張れるんだとも思うし。
うん。もう少し、頑張ってみます(苦笑)
とりあえず昨日一日デート(嘘/相方と遊びに行っただけ)に横○中華街に行き、たらふくご飯食べた後にカラオケ二人で三時間歌い呆けてました(笑)
とりあえずレン曲も歌ったけど、個人的には歌の上手い相方がレンを歌っているのが多いので「○肩の蝶」とかは向こうにレンやってもらって勝手にリンで入ったりとかしてましたww
とりあえず歌ってきたボカロ曲羅列ー
・右/肩/の/蝶
・d/a/n/d/e/l/i/o/n
・I/M/I/T/A/T/I/O/N B/L/A/C/K
・冬/の/虫
・空/飛/ぶ/う/さ/ぎ/の/う/た
・m/a/g/n/e/t(あわせろって言われて無理矢理入ったw)
・F/o/r/t/u/n/e/ d/r/i/v/e/r
くらいだったかなぁ……あとはジャム歌ったり色々阿呆なことばっかり(喉的な意味で)してたからwwww
んー、一月カラオケ行かないとやっぱりダメだねーストレス溜まる!!
とりあえずボカロ楽曲は好きなのも多いし、一人で歌うのもいいけど、やっぱりあわせるのって凄く楽しい(笑)
そんなこんなでカラオケ後は呑みに行って終電まで呑んでw
今日はもう一日爆睡してましたwホントダメ人間生活万歳←おま
うん。おかげでテンションも持ち直しましたっ!頑張って原稿やるって気にはなった。
んー、昨日ちょっと呑みにいったのが相方の知り合いさんとかで、ボクは全然面識ない人ばっかりだったんだよね?
んで、しかも文じゃなくって絵描きさんで、ボクは皆さんのイラストみたことあるくらい凄い人たちで。
そんななかで個人的にわかっていたっていうのもあるけど、相方から僕の文章について、「んー、好きな時もあるけどそっちのが稀」って言われちゃってwwwww
癖があるってことなんだよなーって。
ボクの文章と波長の合う人がいないわけじゃない(って信じたい)から、それでも身近ではそういう見解をもたれるような文章しか書けてないんだなーって思ってねー。
悔しいってのと、じゃあなんでボクの文章は合わなかったのかなぁって思ったり。
ボク個人としては彼が「好き」って言ってくれた奴も今回出した新刊もおんなじイメージ・進行で書いていったつもりだったんです。それでも別れるってことはやっぱり固定化はしていないんだなぁって思って。
難しいよねー。何かを作り出すのって。
だけど、良かったって言ってくれる人がいるからやっぱり頑張れるんだとも思うし。
うん。もう少し、頑張ってみます(苦笑)